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パナ・ケミカルブランディング第1回:ブランドは企業の「芯」を映すもの― C.I起点で考えるブランディングの基本姿勢と表現

更新日:9月17日

パナ・ケミカルのブランディングをサポートしている合同会社KESHINの臼井です。

ブランドという言葉を聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのはロゴやパッケージ、広告のデザインかもしれません。もちろんそれらはブランドを形づくる大切な要素ですが、KESHINが大切にしているのは、もっと根本的な考え方です。 

それは、「ブランドは企業の芯を映すものであり、マーケティング活動全体がブランディングそのものである」という姿勢です。 

マーケティングは企業に関わるステークホルダーによって達成するものであり、私が担当している部分はそのステークホルダーをつなぐインターフェイスであるビジュアルをデザインしている役割です。つまりブランディング活動の一部をサポートしている立場です。これを前提としておさえていただき、ここではパナ・ケミカルのブランディングにおけるビジュアルのデザイン、主にロゴ周りを中心に以下7回に分けてお話します。

 

第1回:ブランドは企業の「芯」を映すもの

第2回:存在意義の再定義と「形」に込めた一貫性

第3回:資源プラ ― 言葉とロゴで社会の認識を変える

第4回:J-EPS Recycling ― 実績を体系化し国際的なモデルへ

第5回:潔いリサイクル ― 哲学を旗印にする

第6回:一貫性が信頼をつくる ― モチーフに込めた意味

第7回:ブランドはステークホルダーとの未来への約束


C.I(コーポレート・アイデンティティ)とは何か

ブランドの出発点となるのが 「C.I(コーポレート・アイデンティティ)」です。 

C.Iとは、企業が「自分たちは何者か」「何を社会に約束するのか」を定義する、いわば「企業の芯」です。 

ここで重要なのは、ブランドを「見せ方」や「スローガン」として表層的に扱うのではなく、「企業のミッションそのものを起点とすること」です。 

一般的にブランドステートメントは「ブランドのミッションやポジショニングを顧客にわかりやすく伝えるもの」とされますが、企業ブランディングにおいては、「その役割を企業のビジョンやミッションが果たす」と私は考えています。 

 

ウェブサイトから始めるブランディング

KESHINのアプローチは、ウェブサイトの見直しからブランディングを始めることです。ウェブサイトは単なる会社案内ではなく、企業の思想や姿勢を最もダイレクトに社会へ示す媒体だからです。

言い換えれば、ウェブサイトを見直すことは、C.Iを社会にどう翻訳するかを見直すことに他なりません。言葉・ビジュアル・情報設計を一度に整理できるからこそ、企業の芯をそのまま映し出す場になるのです。

 

ブランドステートメントとロゴの関係

企業ブランディングのプロセスでは、まず ブランドステートメント(ミッション)を定義し、その上でロゴをどう設計するかを判断します。 

  • ブランドの歴史や認知度を重視するなら「既存ロゴを踏襲して再設計」 

  • 新たな方向性を強く打ち出す必要があるなら「ゼロからの再設計」 

いずれの場合も、その判断基準となるのはブランドステートメントです。 

ロゴは単なるシンボルではなく、「ミッションを視覚的に翻訳するもの」だからです。 


パナ・ケミカルのケース ― 歴史を尊重したロゴの再設計

パナ・ケミカルの場合、ブランディングにあたりロゴは 「既存のものを踏襲しつつ、フォントをマイナーチェンジ」しました。 

これは、50年以上にわたる事業の歴史と積み上げた信頼を大切にした選択です。 

  • ロゴカラーは従来の紺色を継承 

「静脈産業」として社会を支える誠実さと落ち着きを象徴。 

  ブランドステートメントを支えるパナ・ケミカルの歴史や誠実さ、そして情熱を考慮し、既存ロゴカラーをそのまま採用することとしました。

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    フォントの再設計 

  長い歴史を尊重しつつ、PANAの部分は松下電工の化材代理店としてスタートした歴史を尊重するためにパナソニックで使用されているHelveticaを採用し、CHEMICALは「未来」という意味を持つAvenirを採用。 パナ・ケミカルの精神を大切に、プラスチックリサイクルを未来へつないでいくをロゴタイプに込めています。

ここでのポイントは、「変えない」という選択もまたデザイン判断の一つであり、「すべてはブランドステートメントを起点に導き出される」ということです。 

 

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ウェブサイトデザインの方向性 ― ブランドステートメントを体感させる

ロゴのトーンを起点に、ウェブサイト全体のデザイン方向性を設定しました。 

ただしこれは単なる「色合わせ」ではありません。 

  • 清潔感と誠実さを基調に、長年積み上げてきた企業の姿勢を視覚化 

  • 現場写真を積極的に活用し、プラスチックリサイクルに抱かれがちな重い印象を刷新し、真摯でオープンな取り組みとして伝える 

  • 余白を活かした明快なUIで、透明性と未来への開放感を表現 

ここで重要なのは、顧客が後にブランドステートメントを「言葉」として知ったときに、ロゴとウェブサイトの一貫性が納得感を生み、ブランドへの信頼へとつながるということです。 

視覚的な体験と理念が響き合うことで、ブランディングは初めて強固なものになります。 

ブランドは、企業が社会に発する「未来への約束」を形にするものです。 

そしてその出発点は、ロゴや広告ではなく、「C.I=企業のアイデンティティ、すなわちミッション」を明確にし、それを社会にわかりやすく示すことにあります。 

パナ・ケミカルのブランディングでは、ミッションを起点に考え、その上で「ロゴを踏襲する」という選択をしました。 

さらにウェブサイトは、ブランドステートメントを視覚的に体感させ、ロゴとの一貫性を通じて顧客に納得と信頼をもたらす場を狙っています。 

 

次回は、このC.I=存在意義をどう再定義し、「プラスチックリサイクルで世界をつなぐ」というミッションへと結実したのかを掘り下げます。

 
 
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