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【経営管理】設備投資のタイミングをどう読むか?

パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。


最近、お客様より既存設備の更新新規設備の導入に関するご相談を多く頂きます。


長引く経済停滞やバラマキだけに依存する無策政治の影響で、我が国の先行きが全く見えず、経営者の皆様も事業に必要な設備投資の決断をなかなか下す事ができない状況に追い込まれています。


そこにロシアによるウクライナへの侵攻、急激に進む円安、急騰する化石資源価格(原油、天然ガス、石炭)、上昇し続ける金属などの素材価格、装置の制御に不可欠な半導体の不足・・・、事業を営む上で数えきれない程の不安要素が噴出しています。


この様な状況下では目先の事で精一杯になってしまい、将来への投資なんてとても考えられないかもしれません。


しかし、お客様のお話しを伺っていますと、これまで設備投資を先延ばしにし続けてきた結果、施設の老朽化が進み生産効率が低下するなど時代の流れに対応出来なくなってきてしまっている事を痛感しています。


コロナ禍を経て”社会の形”が大きく変容する中、経営者には従業員の「働き方の在り方(ワークバランス)」の見直しが求められ、有能な人材を繋ぎとめるためにソフトとハードの両面での対策(=未来への投資)が喫緊の課題となっています。


プラスチックリサイクルの世界でも、「プラ循法(プラスチック資源循環促進法)」や「改正バーゼル条約」の施行に伴い「再生利用を指向した高品質化のための処理」や「環境に調和した処理」というものが求められています。


故にこれらの課題に対応するためには、嫌でもソフトとハードの両面で「新たな投資」というものを考えなければなりません。


私の客先におかれましても、ポストコロナを見据えて”ソフト面での投資”に積極的に取り組んでおられる事例を多く目にしています。


例えば、我らがパナ・ケミカルにおいては、月に1度営業会議の後に1時間程「パナ・ケミカルオンラインカレッジ」と銘打ちましてオンラインでの社内研修を行っています。


私も講師としてお招き頂き、「プラスチックの基礎知識」をテーマにお話しさせて頂いております。




この様な取り組みは、社員の皆様のスキルアップによる業務の効率化に資するだけでなく、会社として”ヒト”という最も重要な経営資源の育成を積極的に進めている姿勢を社会に訴える事にもなり、新たな有能な人材を集めるための「戦略的な情報資産」にもなります。


ポストコロナの時代には、”個人スキル”というものが事業を継続的に営むための原動力として必須となります。


高度経済成長期には有り余る”数の力(マンパワー)”でブルドーザーの様に経済を回して参りましたが、これからの時代はそんな事は到底できません。


事業に参画する「個人のスキル」を如何に育て上げていくのか、この個人を適所に当てはめて「事業のスキーム」を創り上げて、事業を持続的に営む事ができる「仕組み(ビジネスモデル)」を構築する事が経営者に求められます。


この様なソフト面での取り組みについては、経営者の”腹のくくり方”一つで進める事ができるのですが、ハード面での取り組みはなかなかこの様には参りません。


先にも述べさせて頂きましたが、現在、世界的に半導体が不足しています。


ご存知の方も多いかと思いますが、半導体は装置の制御に欠かす事ができない電子部品の一つで、現代においては「産業の米」とも言える存在です。


我々の業界でも、資源プラ製造に不可欠な破砕機や粉砕機、圧縮機、溶融減容機、再生原料の製造に必要な押出機や混錬機、成形を行う成形機などの全ての装置・機器類に半導体が”ふんだんに”使われています。


つまり、半導体が不足するという事は、これらの装置の供給が滞る可能性が高いという事を示しているのです。


下図をご覧下さい。これは半導体市場の市場規模の推移なのですが、コロナ禍が顕在化してから、我が国も含め全世界的に増大しており、半導体不足の状況を如実に物語っています。





この世界的な半導体不足の直接的な原因としては、


1.スマホなどの情報端末の普及に伴う通信環境の整備(5G化などの通信データの大容量化など)への半導体需要の増加

2.家電製品などをはじめとするモノのインターネット化(IOT化)の推進に伴う半導体需要の増加

3.コロナ禍において、PCやゲーム機、テレビなどへの巣ごもり需要の拡大に対応するための半導体需要の増加


などが挙げられ、更に


4.コロナ禍で一旦減少した自動車などの輸送機器の生産が回復した事による半導体需要の増加


が追い打ちをかけた事にあります。


「半導体が足りないなら、たくさん作ればいいじゃないの?」と思われる方もおられるかと思います。


ところが、話はそんなに簡単には進まないのです。


半導体の製造というものは、莫大な額の投資が必要です。場合によっては数百億円単位の装置をラインに投入する場合があります。


またこの投資によるライン整備を行ってもすぐに生産が軌道に乗る事は無く、通常は2~3年程度の時間を要します。


したがって、現段階で製造能力の投資を行ったとしても、この投資の効果が現れるのはかなり先という事になります。つまり、今回の半導体不足はしばらく続くという事になるのです。


また大口需要の自動車向けの半導体供給に関しても、自動車メーカーは半導体の調達に際し、半導体メーカーに製造ラインの認定を要求する「制約事項」を設けているケースがほとんどで、IT向けの需要が拡大している現在では半導体メーカーとしては手間のかかる自動車向けの需要を後回しにしているのが実情です。


この半導体不足については、もう一つ重要な視点があります。それは半導体メーカーの生産体制です。下図をご覧下さい。これは半導体の売上高シェアを示したものなのですが、国によって「IDM」と「ファブレス」の比率が大きく異なります。





IDMとは「垂直統合型」といわれるビジネスモデルで、半導体メーカーがIPコアの設計からチップの生産・販売までを一貫して行うもので、我が国の半導体メーカーの多くはこの形態をとっています。


他方、ファブレスとは「水平分業化」といわれるもので、IPコアの設計をIPコアベンダーが、チップの開発をデザインハウスが、チップの生産をファウンドリー企業がそれぞれ担うという分業型のビジネスモデルです。半導体生産の雄である台湾では、このビジネスモデルを採るメーカーが多いです。





先にも述べましたが、半導体製造には莫大な設備投資が必要です。そのため製造コストにおける固定費の割合が高くなり、設備投資の回収に時間を要する傾向にあります。


半面、凄まじいまでの技術進歩により半導体の商品としての寿命(商品寿命)は短くなる傾向(=ライフサイクルの短縮化)にあるため、IDMによる半導体供給は経営的に厳しい環境に置かれる様になりました。


このため分業化を進める事で製造コストをカットし、短期での投資回収目指すファブレスが拡大しました。


ファブレスの中で生産に特化した台湾の「TSMC(台湾積体電路製造)」が世界最大のファウンドリー企業として有名で、我が国の熊本へ進出したとのニュースが報道されたのを記憶されている方もおられるかと思います。


我が国の半導体メーカーはIDMの形態をとるものが多く、どうしても投資に見合った回収をスムーズに行う事が難しい状況にあります。そのため、今回の世界的な半導体不足に積極投資を行うなどして即座に対応する事は非常に難しいと言えます。


平たく言えば、半導体産業は”小回りが利かない”構造であると言えるのです。


したがって、世界的な半導体不足はしばらく続くと見るべきでしょう。


この半導体不足が我が国のものづくりに直撃し、装置メーカーでは生産自体が滞るケースも見られます。


最初に述べました様に、プラスチックのリサイクルに関しても、破砕機や粉砕機、圧縮機、溶融減容機などの装置の納期が大幅に遅延しているケースも起きつつあります


他方、プラ循法や改正バーゼル条約の施行に伴いプラスチックリサイクルは新たな局面に突入しました。


安定で持続的なリサイクル事業を営み、全世界を見据えた地球規模の資源循環の輪を構築して維持し続けるために「品質」を指向した新たな「資源プラ製造」というビジネスモデルへの転換が急務です。当然、装置や機器類に対する新たなハード面での投資が必要になります。


しかし、世界的な半導体不足により装置類の供給が滞る事態が発生し、設備投資のタイミングを推し量るのが非常に難しい状況に至っていると言えましょう。


ぜひ、今一度、今後の事業計画について、ソフトとハードの両面でどの様な取り組み(投資)を行っていくのかという点について、戦略を立て直す機会として頂ければと思います。




 
 
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