【環境法務】「処理」と「処分」って、一体“ナニ”が違うの?
- 本堀 雷太

- 2022年9月6日
- 読了時間: 6分
パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。
今回は廃棄物を取り扱う上で最も基本的な用語である「処理」と「処分」という言葉にスポットを当ててみたいと思います。
中間処理業や収集運搬業を営んでおられるお客様は、行政に対してかなりメンドクサイ様々な許認可手続を行わなければならず、業を営む場合には「業の許可」を受ける必要があります。
この許可の際に発行される許可証を見てみると、産業廃棄物の中間処理を営む方が取得した許可証には「産業廃棄物処分業」と記されています。
「処理業じゃないの?ウチは最終処分やっている訳じゃないのに・・・」と思われる方もおられるのではないでしょうか?
そこで「処理」と「処分」という言葉の意味と違いについて、順を追って見て参りましょう。
まず、言葉としての「処理」と「処分」の違いです。
国語辞典では、「処理」とは「事物に何らかの形で手を加えたり、取り計らったりする事で元の状態とは異なる形にする(整理する)事」と記されています。「元の状態と異なる形にする」という点がポイントですね。
化学の世界では、ある素材に化学物質を反応させる事で新たな機能を付与する事がありますが、これを「化学処理」といいます。例えば、金属表面のメッキが化学処理の一つとして挙げられます。メッキを施す事で、元の金属表面とは”異なった形”(耐食性が増すなど)になります。
他方、「処分」という言葉についても国語辞典を見てみると、「事物の始末をつける事」との旨が記されています。「始末」を付ける、つまり「最終的な形(解決)をもたらす」様なニュアンスですね。
例えば、廃棄物法務の世界でよくある「行政処分」が例として挙げられます。敷地内に廃棄物を法で定められた量を越えて積み増した場合、行政からの再三の指導にも関わらず適切な措置を講じなかった場合、行政からは”始末を付ける”ために「措置命令」などの行政処分が下されます。
これが言葉としての「処理」と「処分」の違いですね。

では、廃棄物分野における「処理」と「処分」の違いはどの様なものなのでしょうか?実は、技術的に明確に定められているんです。見て参りましょう。
まず、「処理」についてですが、「廃棄物の保管、収集、運搬、中間処理、最終処分又は再生利用等の一連の流れとその管理を総称したもの」と定義されます。なお、英語では、「Treatment」もしくは「Waste manegement」と表記されます。
他方、「処分」については、特に廃掃法において「中間処理(中間処分ともいう)及び最終処分の両者を含めたもの」と定義されます。英語では、「Disposal」と表記します。

つまり、「処理」とは、廃棄物の発生から最終的に処分されるまでの一連の行為を示しており、この中には、分別、保管、収集運搬、中間処理、再生処理、最終処分が含まれるのです。
他方、処分については、中間処理と最終処分の両者という事になるのですが、この処分の中には、「再生利用(リサイクル)」も含まれるのです。
これは処分というものが、先に述べた様な「事物の始末をつける事=最終的な形(解決)をもたらす」というニュアンスを持っている事に起因しているからです。
したがって、皆様の事業所で処理してパナ・ケミカルに売却して頂いたプラスチック廃棄物の処理物(資源プラ)については、売却後にマテリアルリサイクルに供される流れに乗せられること自体が処分に該当する事になります。
この点、非常に重要です。
廃棄物に適切に中間処理を施した後に最終処分に供される流れは、処理物を自然界に戻して長い年月を掛けて自然界に還元するサイクルとなります(自然界における物質循環)。
他方、プラスチック廃棄物に中間処理を施した後、有償取引に基づく市場取引という経済的な仕組みを利用して人間社会で再生利用する仕組みは、人間社会でのリサイクルとなります(人間社会における物質循環)。
両者とも廃棄物の最終的な行き先を決める(始末をつける)という点で「処分」に該当する訳です。故にリサイクルも処分の一つと位置付けられます。繰り返しますが、この点非常に重要です。
なお、中間処理に関しては、本質的には処分に該当する事から、最近では、行政関係を中心に「中間処分」という方も見られる様になってきています。

さて、続いてこの「処理」と「処分」に関して、実際に法の条文ではどの様に扱われているのか見てみましょう。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)の第一条には、「廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、・・・」との文言が見られます。
つまり、「処理」の中に「分別、保管、収集、運搬、再生、処分等」の行為が含まれている事が分かりますね。
また、廃掃法の第六条の二では、「収集、運搬及び処分に関する基準・・・」という文言が見られます。
「収集運搬」と「処分」は別の物である事が分かりますね。
以上の事から、
(1)「処理」は、「処分」と「収集運搬」に分けられる
(2)「処分」には、「分別、保管、収集、運搬、再生、処分等」の行為が含まれている
(3)「処分等」には、「最終処分(埋立処分、海洋投棄処分)」と「再生利用(リサイクル)」が含まれる
という事になります。

法(廃掃法)の条文に基づく許認可手続に関しても同様な事が言えます。廃掃法においては、業の許可や施設の設置許可に関する事項をゴチャゴチャと定めています。
業の許可としては、「産業廃棄物収集運搬業」、「産業廃棄物処分業」、「特別管理産業廃棄物収集運搬業」、「特別管理産業廃棄物処分業」がありますが、大枠として「収集運搬業」と「処分業」に分かれます。
これは、先に述べました様に「処理」というものが、「収集運搬」と「処分」に分けられている為です。
処分業に関しては、「処分」の中に「中間処理」と「最終処分」が含まれている事になる事から、業として中間処理や最終処分を営む際にはこの処分業の許可を取得する必要があるのです。


しかし、先に述べました様に「処分」の中には再生利用(リサイクル)も含まれているのですが、現在の廃掃法の許可制度においては、リサイクルを営む場合には業の許可制度そのものが存在しないのです。
注意して頂きたいのですが、「業の許可が不要である」と言っているのではありません。「法文に明記されていない」と言っているのです。
これは非常に大きな欠陥であると私は思っているのですが、現行の廃掃法においては、再生利用(リサイクル)の法的な位置付けが非常に曖昧なのです。
プラ循法(プラスチック資源循環促進法)により社会がプラスチックリサイクルへの挑戦を試み始めている状況において、その根幹を成す廃掃法において再生利用(リサイクル)の法的な位置付けがあやふやな状態というのは望ましくないですよね。
次回の法改正において、キチンと整理して頂きたい課題であると思います(無駄に複雑な許認可制度も合わせて見直して頂きたいです!)。
今回は、「処理」と「処分」という言葉の違いについて技術と法律の立場から見て参りましたが、廃棄物を取り扱う事業を営んでおられる皆様には、是非この違いをよく理解しておいて頂きたいと思います。
