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【技術解説】比重と密度のおはなし

更新日:2025年6月16日

パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。

 

早くも年の暮れですが、今年もこの会員ページをご愛顧頂き誠にありがとうございました。

 

さて、私が担当させて頂く今年最後の記事ですが、「比重」「密度」についてお話させて頂きます。

 

プラスチックのリサイクルを行う際に、対象とする廃プラスチックやその処理物の比重や密度というものは非常に重要となります。

 

例えば、廃プラスチックを破砕処理して減容を行う場合、処理物の比重や密度を測定する事で、処理能力や輸送の効率を見積もる事が出来ます。

 

しかし、この「比重」と「密度」という指標は、概念的に全く異なった指標であるものの、現場ではゴチャゴチャに使われており、時に誤った表記もなされている事があります。

 

そこで今回は、比重と密度について簡単にお話しさせて頂きます。

 

まず、比重について見て参りましょう。

 

比重とは、「ある物質の質量と、それと同じ体積を有する基準物質の質量の比」と定義されます。

 

基準物質には、通常、固体、液体については1気圧(1013.25hPa)、4℃における純水が、気体については同温度、同圧力での空気を用いる事になっています。

 

ここで一つ注意して頂きたいのですが、比重は「ある物質と基準物質の質量の比である」という事です。

 

質量同志の比であるという事は、比重には「単位」が無い事を示しています。この点、非常に重要です。

 

時折、廃棄物処理業者の方が発行される文書などで、後述する密度と履き違えて比重に単位が付されているのを見掛けます。これは比重の定義からみれば、明らかに誤りです。

 

さて、この比重ですが、プラスチックに関しては、プラスチックの簡易識別に利用されます。

 

プラスチックは、その分子構造や分子の集合状態により特有の比重を持ちます。そのため比重を比較する事でプラスチックの種類を識別する事が可能です。以下に主なプラスチックの比重を示します。

 



 

比重試験はプラスチックの入門書にもよく書かれている簡易な識別法で、現場レベルでも簡単に行う事ができます。また環境教育の現場でも、プラスチックの分別法を学習する際に行われています。

 

多くの教科書では、媒質(試験に用いる液体)に純水を用いているケースが多いのですが、比重の異なる媒質をいくつか使って比較試験を行うと多くの試料の識別を行う事ができます

 

一例として下の写真を御覧下さい。低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET、但し結晶化処理済)の4つのペレットを媒質に投入して比重を比較したものです。

 



 

左の写真は4種類のプラスチックペレットを純水の中に投入したものですが、純水よりも小さな比重を持つLDPEとPPは浮かび、水よりも大きな比重を持つPSとPETは沈みます。

 

右写真には、媒質の比重を変えて比重試験を例として、媒質に飽和食塩水を使った場合の比重試験の結果を示しています。飽和食塩水の比重は1.2で、これより比重の小さいLDPE、PP、PSは浮かび、これより比重の大きなPETは沈みます。

 

つまり、純水と飽和食塩水を媒質として比重試験を行い、結果を比較すれば、PSとPETを識別する事ができる訳です。

 

この様に比重試験においては媒質の比重を変えて、得られる結果を比較すれば多くの試料を識別する事が可能です。ご参考に下図にプラスチックの比重試験による識別工程例を示します。

 



 

ただし、この試験法には重大な注意点があります。多くのプラスチックには充填剤(フィラー)が使われていますので、先に示したプラスチックの比重の値よりも大きくなる事があります。

 

例えば、多くの教科書では、「ポリエチレンとポリプロピレンだけは純水に浮く」と書かれていますが、実際には、炭酸カルシウムやタルクなどの充填剤が多く使われたポリプロピレンなどでは、純水に沈むものもあります。

 

したがって、比重試験を行う際には、充填剤の使用状況にも注意を払う必要があります。

 

さて、次に密度について参りましょう。

 

密度とは、「ある物質の単位体積あたりに含まれる質量」の事を示します。

 

比重の場合と異なり、質量を体積で割った値となりますので、「単位」を有します。この点、非常に重要です。

 

密度は、本質的に対象となる物質の“混み合い具合(パッキング)”を示す指標で、プラスチックについても密度により物性が大きく異なります。

 

例えば、ポリエチレンには密度の違いにより、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)の3種が存在しますが、これは“分子の混み合い具合”が異なる事に由来します。

 

LDPEはラジカル重合による高圧法という方法で合成されるのですが、この方法ではポリエチレン分子に多くの分岐構造が生じてしまいます。

 

分子内に分岐構造が多くなれば、分子の混み合いは小さくなり、自ずと密度が小さくなります。

 

他方、HDPEは配位アニオン重合による低圧法という方法により合成されるのですが、この方法では直鎖状のポリエチレン分子が得られます。

 

直鎖状の分子はパッキングし易いため、分子の混み合いが大きくなり、自ずと密度が大きくなるのです。

 

LDPEとHDPEは機械的な物性や成形性が大きく異なりますが、この違いの一つの要因が密度の違いという事になります。

 

そのため、プラスチックの物性を把握するためには、密度の違いというものを十分に勘案する必要があるのです。

 



 

さて、一口に密度と申しましても、いくつかの種類が存在します。

 

よく使われるものとしては、「真密度(True density)」「見掛け密度(Apparent density)」「かさ密度(Bulk density)」が挙げられます。

 



 

真密度とは、「物体自身が占める体積(表面や内部の気孔の体積を除いた体積)を物体の質量で割った値」を示します。

 

先に述べたポリエチレンの密度の違いはこの真密度を基準にしています。

 

見掛け密度とは、「物体表面の気孔の体積は除き、内部の気孔の体積は加えた物体の体積を物体の質量で割った値」を示しています。

 

これは、発泡スチロールなど内部に気泡が存在する素材の計量などに利用されます。また廃プラスチックの減容処理を施した処理物の充填度の計測にも用いられ、輸送効率の判断材料となります。

 

かさ密度とは、「粉体や粒体を一定容積の容器に充填し、容器の間隙も体積に加えたものを物体の体積として物体の質量で割った値」を示しています。

 

かさ密度は、ごみ質分析で良く用いられる密度の指標であり、「容器法」という測定法により測定されます。

 

特に一般廃棄物のごみ質分析では慣習的にあえて「密度」とは呼ばす、「単位容積重量」と呼ぶ事になっています。

 

これらの各種密度の定義から、一般的には、

 

真密度 ≧ 見掛け密度 ≧ かさ密度

 

の関係が成立します。

 





 

「比重」も「密度」も温度の影響を大きく受けるのですが、実務的には、室温においては同じ値と見なして支障はありません。

 

しかし、ここまでお話しさせて頂きました様に、両社は本質的に全く異なった工学的な意味を持っており、この点はキチンと理解しておく必要があります。

 

比重も密度もプラスチックのリサイクルの現場では絶対に必要な単位ですので、書類などでお目にされた際には、今回お話しさせて頂きました内容を思い出して頂ければ有難いです。

 

 
 
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