【技術解説】マテリアルリサイクルを邪魔する再生品
- 本堀 雷太

- 2024年7月1日
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パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。 外は長雨、まさに梅雨時です。
さて、マテリアルリサイクルを進める上で最も大切な事は、再生原料の用途を確立する事にあります。
いくら品質の良い再生原料を製造しても「利用先」が無ければ意味がありません。
そのため、再生原料の用途を拡大させるため、日々多くの商品開発が行われ、グリーン調達などの政策も実施されています。
しかし、時には再生品の流通拡大が他の製品のマテリアルリサイクルを阻害する事もありまして、今回はそんな事例のひとつをご紹介させて頂きます。
物流の現場などでは様々なプラスチック製の梱包材が利用され、多くがマテリアルリサイクルに供されています。
その一例として、プラスチック製の結束バンドが挙げられますが、この素材には古くからポリプロピレン(PP)が用いており、「PPバンド」などと呼ばれています。
排出されたPPバンドは分別(前処理)により異物が取り除かれた後、破砕や圧縮などの中間処理が施されます。
参考に圧縮処理を施す場合のフローを下図に示します。

この工程の中でも大切なのは異物の除去でありまして、以前、私が行った異物調査では、紙テープ、ガムテープ、セロハンテープなどのテープ片、金属製クリップや段ボール用の留め金具など実に多様な顔ぶれが見られました。
特に多かったのが、PPバンド同士を結束する金具でありまして、この金具は手で除くのが難しいため、金具の部分だけをハサミで切り分けて除去していました。

しかし最近、これらの様な異物のみならず、“素材の異なる”結束バンドが混入する様になってきました。
下写真をご覧下さい。

排出された結束バンドの中にPP以外の素材のものが見られます。
実はこれはポリエチレンテレフタレート(PET)製の結束バンドで、特にPETボトル由来の再生品(再生PETバンド)が多く見られます。
従来、再生PETバンドはPPバンドと質感が異なるものが多かったのですが、最近ではPPバンドと非常に質感が似たものも現れまして、リサイクルの現場では分別に困惑する事態が起きています。
そこで両者の簡単な識別法をお話しさせて頂きます。
最も手っ取り早い方法に「燃焼試験」というものがあります。
この方法は読んで字の如く、「プラスチックの試験片を燃やす」というものでありまして、リサイクルの現場でも広く行われているものです。
実際にPPバンドと再生PETバンドを燃やしてみた様子を下写真に示します。


PPバンドは、燃焼時に火炎部の先端は黄色となり、下端部は青色となります。また燃焼の進行に伴い試験片が溶融して下方に垂れていきました。
他方、再生PETバンドは、燃焼時に橙黄色の炎が立ち上がり、多量の「すす」が発生しました。
すすとは、未燃の炭素成分の事でPPの燃焼時にはほとんど見られませんでした。
つまり、燃焼時にすすが発生するか否かがPPとPETを見分けるポイントの一つとなります。
更に燃焼後の試験片を見ても、PPではすすの付着が全く見られないのに対し、PETでは多量のすすが付着しています。
これも識別の大きなポイントです。
また先に述べた様に燃焼時の炎の色も異なる事に注意を要しますが、炎の色を見分けるのは多少の経験が必要です。
それにしても、なぜPETの燃焼時には多量のすすが発生するのでしょうか?
そこでPPとPETの分子構造を見てみましょう。

PETは分子中にベンゼン環を有するため、PPに比べて炭素の含有量が多く、燃焼に際してより多くの酸素を必要とします。
そのため通常の燃焼条件では不完全燃焼に陥りやすく、多量のすす(未燃炭素)が生じるのです。
「試験片を燃やす」という単純な操作なのですが、慣れると様々な種類のプラスチックの識別に関する知見を得る事ができますので、ぜひ一度、皆様の事業所でもお試し下さい。
それにしてもマテリアルリサイクルを推し進めるために開発された再生PETバンドがPPバンドのマテリアルリサイクルを妨げるなんて、何か“本末転倒”ですね。
しかし、この様な場合においても、キチンと素材毎に分別する事が出来ればリサイクルを適切に進める事ができます。
そのためにはプラスチックの基本的な性質をよく理解し、適切な識別法を確立して、作業者に習熟して頂く事が大切であると思います。
