【技術解説】発泡スチロール製魚箱の作り方
- 本堀 雷太

- 11月1日
- 読了時間: 3分
パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています技術士の本堀です。
パナ・ケミカルといいますと、真っ先に「発泡スチロール(EPS)のマテリアルリサイクル」と思い浮かぶ方が多いのではないかと思います。
最近では、発泡スチロールのマテリアルリサイクルはプラスチックリサイクルの先駆的な事例として、専門的な技術書のみならず環境教育に関する教科書にも掲載されています。
今やパナ・ケミカルが築き上げた発泡スチロールのマテリアルリサイクルシステムは、“日本発祥”のリサイクルのトップランナー「JーEPS recycling」として海外でも知られる存在にまで成長しました。
中でも卸売市場やスーパーマーケットなどで排出される「発泡スチロール製魚箱」をターゲットとしたマテリアルリサイクルはJーEPS recyclingシステムの中核を担う存在です。

発泡スチロール製の魚箱のマテリアルリサイクルを進めるためには、そもそも発泡スチロール製魚箱がどの様に作られ、どの様な性質を持っているのかを知る必要があります。
そこで今回は、発泡スチロール製魚箱がどの様にして作られるのかをザックリとお話させて頂きます。
発泡スチロール製魚箱が登場する以前は、産地市場や卸売市場で取引される水産物は木製の「トロ箱」で輸送されていました。
しかし、重くて断熱性が劣り、しかも廃棄後の処分に難があるため、発泡スチロール製魚箱への転換が進みました。
その結果、現在では様々な水産物(鮮魚、冷凍魚、加工魚、水産加工品)のみならず青果物でも発泡スチロール製魚箱が多様される様になりました。

魚箱に使われる発泡スチロールは、「ビーズ発泡成形法」により製造され、この方法で製造された発泡スチロールを「Expanded Polystyrene」、略して「EPS」といいます。
「JーEPS recycling」の「EPS」は、ここに由来しているんですね。
ビーズ発泡成形の流れは、以下の様になります。
1.予備発泡
発泡剤を含侵させたビーズ(含侵ビーズ)を予備発泡機で、80~100℃の水蒸気を当てる事で加熱し、所定の倍率まで発泡させる
2.熟成
予備発泡させたビーズの気泡内に空気を侵入させて気泡を安定化させるため、サイロ内で5~6時間熟成させる
3.成形・乾燥
予備発泡ビーズを金型に充填し、115~125℃の水蒸気で予備発泡ビーズが軟化するまで加熱し、再膨張と融着を行い形を付与する。離形後、乾燥室において、60℃で乾燥を行う

特に重要なのは、金型内で魚箱の形状を付与する段階(賦形)で、予備発泡ビーズが再膨張し、ビーズ同士が融着する事で一体化し、強度、特に耐衝撃性が付与される事です。
実際、気泡が成長したEPS表面を見てみますと、気泡が成長する事で気泡同士が密着している様子が良く分かります。

適切なリサイクルを行うためには、リサイクルの対象となる製品が如何にして製造されているのかを良く知る必要があります。
今回はパナ・ケミカルの誇る発泡スチロールのマテリアルリサイクルシステム「JーEPS recyclin」のメインターゲットであるEPS製魚箱の作り方を説明させて頂きました。
パナ・ケミカルでは会員の皆様向けに、今回のテーマに関する解説動画も公開しています。
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