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【プラスチックの豆知識】プラスチック製品と商標のおはなし

更新日:6月16日

パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。

 

皆様、突然ですが、下の写真に写っているプラスチック製の容器の名前、何て言います?

 

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「タッパー」と言う方が多いのではないでしょうか?

 

実は、「タッパー」という名称は、アメリカのタッパーウェア社が製造しているプラスチック製容器の商品名であり、同社により「タッパー」や「タッパーウェア」という名称自体が商標登録されています。

 

そのため、タッパーウェア社以外の会社が製造したプラスチック容器については、「タッパー」とか「タッパーウェア」と表記したり、呼称したりする事は出来ない事になります。

 

しかし実際には、多くの方が上写真の様なプラスチック製密閉容器の事を「タッパー」と呼んでいますよね。

 

本来、商標とは、特定の企業や団体が提供する商品やサービス(専門的には「役務」と言います)を識別する機能を有しており、「タッパー」という名称についても、タッパーウェア社が製造した製品と他の企業が製造した同様の製品と識別するために商標登録した訳です。

 

ところが、取引者や消費者の間では、タッパーが広く普及するに伴って、プラスチック製の密閉容器自体の事を「タッパー」と呼称する様になってしまいました。

 

この様な現象を「商標の普通名称化」といい、商標登録をした企業からしてみれば、自社製品のブランドの失墜を意味します。

 

そのため、過去にタッパーウェア社はCMなどで、「タッパーという名称が使えるのはタッパーウェア社だけである」とメッセージを流して商標の保護を図った事もあります。

 

一般の消費者がプラスチック製の容器の事をタッパーと呼ぶのは法的に全く問題ないのですが、商標権を有するタッパーウェア以外の事業者が製造したプラスチック製の容器についてタッパーという呼称を付与する事は商標法に違反する事になります。

 

そのため、タッパーウェア社以外の事業者が製造した容器については、「プラスチック製密閉容器」とか「シール容器」などといった異なる呼称が付与されて販売されています。

 

この様な商品の普及に伴う商標の普通名称化の事例は、プラスチック製品の分野で時折見られるものです。

 

例えば、プラスチック製のバケツの事を「ポリバケツ」と呼ぶと思いますが、ポリバケツという名称自体、積水テクノ成型株式会社が保有する商標登録となっています。

 

そのため、他社が作ったプラスチック製のバケツについては、「プラスチックバケツ」など他の呼称が使用されています。

 

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また、皆様よくご存知の包装資材「プチプチ」ですが、これは1枚のポリエチレンシートに円筒状の突起を成形し、ここにもう1枚のシートを接着する事で円筒状の突起部分に空気を閉じ込めたものです。

 

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専門的には「気泡緩衝材」といいますが、「プチプチ」とか「プチプチシート」とかいう人が多いですよね。

 

実は、この「プチプチ」という名称も川上産業株式会社が保有する商標なのですが、他にも同様な製品について様々な商標が取得されています。

 

そもそも、この気泡緩衝材は、アメリカのエアープロダクツ社が製造したのが始まりなのですが、この商品については、「Bubble Wrap」という名称で商標が取得されています。

 

国内では、酒井化学工業株式会社の「エアーキャップ」、株式会社ジェイエスピーの「キャプロン」などが知られています。

 

そして、忘れてはならない事例として挙げられるのが、「サランラップ」「クレラップ」といった食品包装用プラスチックフィルムです。

 

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「サランラップ」や「サラン」という名称については、ダウ・ケミカル社と旭化成株式会社が、商標を保有し、「クレラップ」という名称は株式会社クレハが商標を保有しています。

 

この「サラン」という名称は、塩化ビニルと塩化ビニリデンの共重合体の商品名でありまして、フィルムや繊維の原料として利用されています。

 

元来、ポリ塩化ビニリデンという樹脂は、化学薬品への耐性に優れ、水蒸気や酸素などの透過性が低く、おまけに難燃性を有するという優れものなのですが、他方、加熱すると溶融せず分解してしまうため、成形加工が難しいという特徴を有します。

 

この欠点をクリアしたのが、アメリカのダウ・ケミカル社でありまして、塩化ビニリデンと塩化ビニルを共重合させることで、軟化温度の制御を可能としました。

 

ポリ塩化ビニリデンのシートは、他のプラスチックシートには無い「自着生(自己粘着性)」という性質を有していまして、食品をフィルムで包んだ際に、しっかりとフィルム同志が密着します。これは食品包装を行う上で非常に有利な性質です。

 

このポリ塩化ビニリデン製の食品包装用プラスチックフィルムは、高度経済成長期における冷蔵庫の普及や、近年の電子レンジの利用拡大に伴って急速に普及してきました。

 

普及に伴い食品包装用のプラスチックフィルム全般の事を「サランラップ」と呼ぶ方も増えてきたのですが、実際には、クレハをはじめ他の会社で製造された食品包装用のプラスチックフィルムも流通しています。

 

この様に、商品の普及に伴って商標の機能が低下し、普通名称化していく事は、商品を製造している企業にとってはブランド力の低下という負の側面があるものの、逆に考えれば、その商品が市場を席捲しているという見方もできる訳でして、なんだか不思議な感じですね。

 

 

 
 
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