【技術解説】ビジネスモデルから資源プラにおける「品質」について考える
- 本堀 雷太

- 2024年9月1日
- 読了時間: 9分
更新日:2025年6月16日
パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。
我々がこれまで取り組んできた「資源プラ(資源プラスチック)」という“挑戦”なのですが、最近は様々なメディアでも取り上げて頂く事が多くなって参りまして、プラスチックリサイクルの新たなカタチを社会に提案させて頂いた手応えを感じています。
「資源プラ」とは、有償取引に供されるプラスチック廃棄物の前処理後、中間処理後の処理物に適用される概念であり、取引上、品質面で一定の基準を満たす処理物について「資源プラ」との呼称を付与する事で、市場経済に叶った形での、流通上のインセンティブを付与するものです。
この取り組みのカギとなるのが、「品質」というものをどの様に捉えるのかという点であります。
我々は、資源プラスチックの定義を「適切な前処理、中間処理を施す事で、全量再生プラスチック原料の基材として利用できる“品質”を保持する処理物である事」と定め、“品質の向上”による円滑な静脈物流を維持する事を目指すに至りました。
しかし、世の中ではプラスチック以外にも、古紙や金属スクラップ、建設廃材、堆肥など様々な廃棄物がリサイクルされていますが、プラスチックのマテリアルリサイクルを行う場合に比べ、「品質」についてとやかく言われる事はあまりありません。
なぜなのでしょうか?
そこで今回は、「プラスチックのマテリアルリサイクルにおいてなぜ「品質」が大切なのか?」という点について、ビジネスモデルの視点から考えてみたいと思います。
まず、通常の廃棄物処理のビジネスモデルを見てみましょう。
例えば、リサイクルに適さないプラスチック廃棄物を焼却処分して、残った焼却灰を埋立処分する様なケースを想定してみて下さい。
排出事業者により排出された廃棄物は収集運搬業者などにより中間処理業者へ運送されます。
中間処理業者は排出事業者より処理手数料を受け取り、廃棄物を「安定化」、「安全化」、「無害化」するための処理が施されます。
技術的な見地では、中間処理とは、「廃棄物をエネルギー的に安定な状態に変化させ、衛生面での周辺に影響を及ぼさない状態に保つ処理」と定義する事が出来ます。
この他にも中間処理には、廃棄物のハンドリング性を上げる「減量化」やリサイクルに供する「資源化」の意義もあり、これらは“現在”の中間処理業者に求められる要素です。
中間処理が施された“廃棄物”は最終処分業者へ送られます。最終処分業者は排出事業者より処理手数料を受け取り、埋立処分などを施します。

このビジネスモデルにおいては、以下の2つの点が重要です。
(1)排出された廃棄物は、最終処分されるまで「廃棄物」であり続ける
(2)「廃棄物(モノ)」と「カネ」が同じ方向に流れていく
最終処分まで“廃棄物”であり続けるため、マニュフェストによる管理が必要です。これは、処理料金の支払いと共に廃棄物が処理されていく訳ですから、排出事業者としては適切に処理がなされているか確認する必要がある訳で、いわゆる「排出者責任」というものですね。
しかし、逆に処理業者の立場からしてみれば、処理料金のみを受け取って“いい加減”に処理する方が儲かってしまいます。
なぜならば、中間処理や最終処分というものは、施設の維持管理や周辺環境対策に多大なコストが掛かるからでありまして、“いい加減”に処理した方が、これらのコストを抑える事ができ、結果として利益が増す訳です。
これが中間処理自体を施さずに不法投棄してしまったり、いい加減に不適正な処理をしてしまったりする温床となっています。
この様な事態を防ぐため、環境省が排出事業者の責任でマニュフェスト管理を徹底させたり、現地確認を義務付けたりしているというのが現在の廃棄物政策の現実です。
ざっくばらんに言ってしまえば、中間処理の3原則である「安定化」、「安全化」、「無害化」をクリアすれば良い訳で、“処理のレベル”自体に経済的な価値は発生しません。
そのため、不景気になって廃棄物の発生量が少なくなってしまったりすると、処理業者間で処理手数料のダンピング合戦が起こったりします。
処理料金を下げても、施設の維持管理費は下がりませんので、収益が悪化し、結果として不法投棄や不適正処理に走ってしまう業者が現れてしまいます。
いずれにせよ、通常の廃棄物処理のビジネスモデルにおいては、「品質」という要素は全く介在しないといえます。
他方、パナ・ケミカルが長きに渡って営んできた有償買取に基づくプラスチックリサイクルのビジネスモデルを見てみましょう。

排出事業者から排出されるプラスチック廃棄物は、パナ・ケミカルが直接「有価物」として購入したり、中間処理業者へ引き渡されたプラスチック廃棄物に中間処理が施された後にパナ・ケミカルによって「有価物」として購入されたりします。
購入された有価物は、再生プラスチック原料に加工された後に、国内外のプラスチック成形業者等に売却され、第二の“ライフステージ”を歩む事になります。
このビジネスモデルのポイントは、以下の2点です。
(1)有償買い取りにより、廃棄物から有価物へ変わる
(2)有価物売買取引では、「モノ(有価物)」と「カネ」が“逆に”流れる
この「有価物への転換」は、ビジネスモデル的に非常に大きな意味があります。
排出事業者にとってみれば、本来廃棄物であるプラスチック廃棄物を引き取ってもらって、おまけにおカネまで貰える訳ですし、法律上マニュフェストの発行も不要で、事務コストの削減にもつながります。
中間処理業者にとっては、処理委託料金と共に処理物の売却益も得る事ができ、またマニュフェストについてもこの中間処理業者終わるため、以降の事務管理が不要となる訳です。
そして最も重要なポイントとして、有価物が高く売れるためには“適切に処理”され、“取引上必要とされている品質基準”が満たされている必要があるため、処理業者が不法投棄や不適正処理したりする必要が全く無いという事が挙げられます。
品質に優れるプラスチック廃棄物の処理物ほど条件の良い取引ができる訳ですから、多くのプラスチック廃棄物を確保して、適切に処理して品質を高めた方が儲かる事になります。
この様にパナ・ケミカルが構築した「有償買取システム」は、「品質」という評価基準が介在した「経済の原則」に則ったものであり、不法投棄や不適正処理を“必然的に”防ぐ事ができる効率的な仕組みであると言えます。
「資源プラ」の取り組みは、プラスチック廃棄物の処理物について、「品質基準」というものを明確に定め、この基準を満たす様な品質面で優れる廃プラスチック処理物について、「資源プラ」と呼び習わす事で、再生プラスチック原料のユーザー様や社会一般に対して、廃棄物から有用な再生資源に生まれ変わった事をアピールするという取り組みであると言えます。
この「資源プラ」という概念が社会に広まれば、排出事業者や処理業者においては、流通性に優れる「資源プラ」を優先的に製造するため、プラスチック廃棄物の前処理や中間処理が適切に行われる事になるでしょう。
そして、品質面で優れる「資源プラ」が市場に多く流通する事により、品質や機能に優れる再生プラスチック原料が開発・製造され、結果として、プラスチック産業全般における再生プラスチック原料の地位が向上する事になります。
つまり、「資源プラ」という概念の導入は、「資源循環の輪」を広げ、更に強固にしていく取り組みといえる訳です。
さてここで、パナ・ケミカル型の有償買取システムのビジネスモデルについて、他の廃棄物の有価取引システムと対比しながら見てみたいと思います。
プラスチック廃棄物以前に成立した有償買取システムのビジネスモデルを確立したものの代表的なものとしては、古紙と金属スクラップが挙げられます。
先人達の多大な努力により、多様な国際的流通チャネルが形成され、今日も機能しています。相場情報は業界誌などにも掲載され、大きな変動が起きた場合には、経済紙などでも取り上げられていますね。
他方、古紙や金属スクラップは用途が限られ、また再生品の機能や物性に古紙や金属スクラップの排出時における品質が与える影響が比較的少ないので、品質自体が価格に与える影響が小さい事が特徴です。
そのため、需給バランスのみで取引価格が形成される傾向が強く、昨今の様な激動の経済情勢下では、激しい乱高下の相場環境の中で生き抜く事を余儀なくされます。
もう一つ事例を挙げましょう。堆肥です。食品リサイクル法の施行により、食品廃棄物より堆肥が製造されるケースが多くなってきました。一部には、堆肥を有償で引き取って調整し、農家などへ転売する業者も現れましたが、あまり上手くいっていない様です。
また品質に明確な基準が無く、取引価格の目安が無い点も問題です。つまり堆肥の流通においては、公正な市場自体が確立していない事になります。

これらの事例に比べると、パナ・ケミカル型の有償買取システムにおいては、
(1)品質自体に経済的な価値が発生する
(2)プラスチック自体の種類が多く、多様な用途が存在する
(3)成熟した市場と多様な流通チャネルが存在する
といった背景があるため、ビジネスモデルとして成立する事がお分かり頂けると思います。
特に、中間処理業者の皆様にとっては、従来型の「処理する」ことにより得られる手数料に依存する体質から、「売る」ことによって得られる売却益を稼ぐ体質への転換がこれからの中間処理業のビジネスモデルになると思います。
つまり、「資源プラ」の取り組みは、「単に廃棄物を処理する」という形から「再生プラスチック原料の基材を製造する」という“意識の転換”をより積極的に後押しするものであると言えましょう。
