【技術解説】サイクロン集塵装置によるプラスチック破砕物の回収
- 本堀 雷太

- 2024年10月1日
- 読了時間: 6分
更新日:6月16日
パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。
少しづつですが、ようやく秋めいてきましたね。
さて、今回は中間処理を支える要素技術の一つをガッツリと解説させて頂きます。
プラスチック廃棄物の中間処理の技術は日進月歩の勢いで進歩してきました。
特に破砕処理技術は最も多くの事業所で採用されている中間処理技術であり、プラスチック廃棄物の容積を減少させる事によりかさ密度が増し、後工程におけるハンドリング性の向上による処理の効率化や、輸送や保管の効率を向上させています。
他方、破砕処理においては、粉塵や騒音、振動といった環境負荷も発生するため、周辺環境の保全や衛生的な作業環境の確保のため、適切な対応を施すことが望まれます。
例えば、粉塵については、破砕機本体の投入部での飛散が多くなりますが、最近の破砕機では破砕物を空送して後続の集塵装置で回収したり、投入部を減圧して粉塵の飛散を防いだりする仕様が多くなってきており、「破砕機の密閉化」、つまり“粉塵の封じ込め”が進んでいます。

この破砕機の密閉化により、作業効率や安全性、衛生性が格段に向上しました。
また、破砕工程の後段に集塵装置を設置する事により、プラスチック破砕物の回収を効率的に進める事が可能となりました。
今回は、その様な破砕処理の密閉化において陰ながら活躍している集塵装置、特に「サイクロン(Cyclone)」というタイプについて説明させて頂きます。
皆様、「サイクロン」という言葉、どこかで聞かれたことがありませんか?
北中米地域、特にメキシコ湾岸を毎年襲い多大な被害をもたらす熱帯低気圧の事をサイクロンと呼んでいますよね。
サイクロンとは元来、「円」や「旋回」などを意味する「cycle」を語源とした言葉で、「低気圧」を意味します。
なお、この低気圧についてですが、地域によって呼び名が異なり、北中米地域では「ハリケーン」、アジア地域では「タイフーン(台風)」と呼ばれ、これら以外の地域では「サイクロン」と呼ばれています。
このサイクロン(低気圧)は、その中心に向かって風が旋回しながら吹き込んでいるのですが、これからお話しする集塵装置のサイクロンについても「旋回する流体」を利用したものである事から、この様に命名されました。
サイクロン集塵装置は、気体中もしくは液体中に混ざった状態の固体を分離するための装置で、遠心力を利用した遠心分離器の一種です。
サイクロンは、1886年にアメリカのエンジニアM.O.Morseにより発明され、部品が少ないシンプルな構造で、メンテナンスが容易、比較的低コストでの運転が可能などの利点を有しているため、現在でも非常に多岐の分野で利用されています。
基本的には、入口管と排気管を備えた円筒部の下に円錐部を取り付け、円錐部の下部に排出管を取り付けたシンプルな構造をしています。

固体が混ざった気体もしくは液体は、サイクロン内部を旋回しながら遠心分離され、固体は壁面に衝突した後、重力の影響で下部に落下します。
他方、気体や液体は、上方より排出されます。
なお、サイクロンは、固体が混ざった気体もしくは液体の流入方向により、「接線流入式」(上図)と「軸流式」に分類され、軸流式は更に流出方向により、「直進流式」と「反転流式」に分類されます。
一般に、プラスチックの破砕処理においては、接線流入式を用いる事が多いですが、設置スペースが限られる様な制約がある場合には、軸流式を用いる事があります。
しかし、軸流式では、微細な粉塵を回収する事が難しい場合があるので運転条件をよく吟味する必要があります。
先に申しました様に、サイクロンは気体中もしくは液体中に混ざった状態の固体を分離するための装置であります。
従って、破砕処理後のプラスチック破砕物のサイクロンによる回収については、「気体である空気中」に混ざった「固体のプラスチック破砕物」を分離するプロセスであると言えます。
サイクロンにおけるプラスチック破砕物の分離は以下の様に進行します。
まず、ブロア(送風機)により、プラスチック破砕物を含んだ空気が接線方向からサイクロンの円筒部内に導入されます。
次いで、プラスチック破砕物はサイクロンの外筒内壁に沿って旋回運動し、遠心力と重力によって円錐部下部方向へ移動しながら空気と分離されていきます。
分離された空気は上部の排気口から放出され、プラスチック破砕物は下部の排出口より回収されます。

これが、サイクロン集塵におけるプラスチック破砕物の挙動です。
シンプルながら実に良くできた仕組みですね。
しかしながら、時折、客先から「サイクロンから小さな破砕物(粉塵)が飛び出してきてしまう」とのトラブルについてのご相談を受ける事があります。
なぜこのような事が起こるのでしょうか?ちょっと考えてみましょう。
サイクロンにおいては、捕集できる固体の最小粒径、つまり「分離限界粒子径」というものを考慮して設計が行われます。
当然、分離限界粒子径が小さい程、多くの固体を回収する事が可能となります。
分離限界粒子径は下式の様な比例関係にある事が実験的に知られています。

この式によれば、サイクロン集塵においては、円筒部(外筒)の半径R1 が小さいものほど、また入口における流体の速度viの大きいものほど分離限界粒子径Dpc が小さくなり、固体成分の回収率が向上する事になります。
「サイクロンから小さな破砕物(粉塵)が飛び出してきてしまう」というトラブルは、粒子径の小さな固体(粉塵)がサイクロンの下部の排出口より回収されず、上部の排気口より空気と一緒に排出されているという現象が起きていると言えます。
基本的に既に設置されているサイクロン自体の形状や寸法を変える事はできませんので、流体の速度、つまり空気の速度(風量)を調整して対処する事になります。
上式において、サイクロンの入口における流体の速度viを増せば、分離限界粒子径Dpcは小さくなり、回収率も向上する事が分かります。
そのため、この場合、ブロワの調整により風量を増せば良いという事になります。
実際には、風量の調整に加え、流路の調整やサイクロン内部における静電気の制御など様々な取り組みを行う事になりますが、原理的には、まず風量を調整する事になります。
サイクロンはシンプルな仕組みながら効率的にプラスチック破砕物を回収する事ができる“縁の下の力持ち”の様な存在です。
廃棄物の中間処理技術は、破砕などのコアの技術のみならず、この様な付属的な技術の支えによっても進歩を続けてきました。
大まかで良いので、どの様な技術で、どの様な原理に支えられているのかを知っておくと、装置の選定や運転管理を進めていく上で役に立つと思います。
