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【技術コンサルティングの現場から】ちゃんと健康診断していますか?

パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。時は梅雨時、蒸し暑いですね。


さて、先日、私のお客様の事業所で人身事故が発生しまして、労働基準監督署の調査が入るという事態が発生しました。


その折に、その事業所では社員に法定の健康診断を受けさせていない事が発覚し、労働基準監督署から指導が入り、その事業所の所長さんはすっかり憔悴した様子でした。


私も労働衛生コンサルタントとしてこの事業所における労働安全衛生に関する指導を承っていた関係から指導時に呼び出されまして、署員から、「健康診断の受診は職場における健康管理の基本なんですから、しっかりと指導して下さいよ!」とコッテリと油を搾られてしまいました。


実は、従来、この事業所では会社主導の健康診断を行わず、従業員が好きな医療機関で健康診断を受診し、後日、受診結果を会社に提出するという形をとっていたのですが、だんだんなし崩し的になってしまい、近頃は受診自体をしない従業員が増えていたようです。


この事業所の所長さんも、「健康診断なんて、自主的にやればいいんじゃないの?」と仰っておられましたが、これは大きな間違いです。


実は、事業所における労働者の健康診断の受診は、法令で定められた「義務」であるのです。


労働安全衛生法では、事業者は使用する労働者に健康診断を“受けさせる義務”があり、労働者は健康診断を“受診する義務”があると定められています(労働安全衛生法第66条1項、第66条5項)。





厄介な事に、労働者が受診をしなかった場合には罰則がないのですが、事業者が使用する労働者に健康診断を受けさせなかった場合、50万円以下の罰金に処せられることがあるのです。


そのため、事業者の立場としては、法定の健康診断についてよく理解しておく必要があります。そこで、今回は事業所における法定健康診断について、簡単にまとめておきたいと思います。


なお、ここで言う「法定」とは、「労働安全衛生法に定める」という意味です。


まず、法定健康診断にどの様なものがあるのか、下図に示します。





まず、労働者の全体的な健康状態を経時的に把握して、適切な事後措置を講ずるために行われる「一般健康診断」が挙げられます。


この中には、「雇入れ時の健康診断」や「定期健康診断」などが存在しますが、法令により対象となる労働者や実施時期が定められています。





この中で重要なものは定期健康診断であり、事業者が「労働者全員に対して」、「1年以内ごとに1回」行わなければなりません。


また、深夜業務を含む特定業務従事者に対しては6ヶ月以内ごとに、定期に所定の項目について健康診断を行う事になっています。


紙面の関係で割愛しますが、一般健康診断を行った結果、何らかの所見が発見される割合(有所見率)は年々増加しておりまして、労働者の健康管理において一般健康診断行う意義は大きい事が伺えます。


では、どの様な項目を診断するかと申しますと、雇入れ時の健康診断と定期健康診断の診断項目は以下の様に定められています。





なお、定期健康診断の診断項目については、それぞれの項目において定められる基準に基づき、医師が自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、総合的に必要でないと認めるときは省略することができます


次に有害業務に従事される労働者の方が受診しなければならない「特殊健康診断」と「歯科特殊健康診断」についてお話しさせて頂きます。


特殊健康診断には、個別の法令により定められている「法定の特殊健康診断」と行政による通達により定められている「行政指導による特殊健康診断」が存在します。


法定の特殊健康診断については、個別の法令に定める有害な業務に常時従事する労働者等は、原則として、雇入れ時、配置替えの際及び6月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回)、それぞれ特別の健康診断を実施しなければならないと定められています。





粉じん作業の健康被害である「じん肺」や、有機溶剤や鉛、石綿、放射性物質などの有害物質の取り扱い作業に従事する労働者は、法定の特殊健康診断を医師より受ける必要がある訳です。


なお、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんなど、歯やその支持組織に有害な物質のガス、蒸気又は粉じんに常時暴露される労働者の方については、医師ではなく歯科医師の健康診断を受診しなければなりません(歯科特殊健康診断)。


行政指導による特殊健康診断については、指針や通達により下図に示す有害業務に従事する労働者に特殊健康診断を受診させる事と定められています。





プラスチックのリサイクル、特に中間処理においては、「騒音」や「重量物取扱い業務」に関する業務が特殊健康診断に該当する可能性があります。


また、再生処理やプラスチック原料製造(コンパウンディング)などの現場では、添加剤として「有機りん剤」や「フェノチアジン系薬剤」などの化学物質を使用する事がありますので、労働者に従事させる業務が特殊健康診断の対象となるか注意して下さい。


最後に健康診断を行った後に事業者がやらなければならない事をまとめておきます。





まずやらなければならない事は、「記録」です。


健康診断の結果は、労働者毎に「健康診断個人票」を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間、保存しておかなければなりません。


合わせて受診された労働者に対しても、診断結果を「通知」する必要があります。


当然、労働者の個人情報やプライバシーには十分配慮する必要があります。


また、常時50人以上の労働者を使用している事業者は、健康診断(定期のものに限る。)の結果を、遅滞なく、法令に定められた様式に従って、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません


この労働基準監督署への報告、結構やっていない事業者の方がおられますのでご注意下さい。バレた時、とても厄介です。


健康診断の結果、診断項目に異常が見らえる労働者の方も当然おられる訳ですから、この場合、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。


そして、この意見を十分に吟味し、必要に応じて当該労働者について、作業の転換や労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。


また、健康診断の結果、診断項目の異常ではないのですが、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対しては、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。


例えば、「太り過ぎ」ですとか、「お酒の飲み過ぎ」ですとか、何だか耳が痛くなるような話が多いですが、この様な場合は医師や保健師によるアドバイスを受ける機会作る必要があります。


最近では、「労働者の心の健康の保持増進(メンタルヘルスケア)」に対しても配慮が求められていますね。


厚労省の発表では、職業生活等に関して強い不安やストレスを感じる労働者の割合が約6割に達しており、精神疾患の発症や自殺の増加に繋がっていると見られます。


皆様の事業所におかれましても、実情に即した形でのメンタルヘルスケアに取り組んで頂きたいです。


職場における労働者の健康管理は、事業を安定に進めていくために必須の事項です。


今回は、健康診断に的を絞ってお話しさせて頂きましたが、制度をよく理解して頂き、適切に労働者の健康管理を進めて頂きたいです。




 
 
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