top of page

【化学経済】原油価格、天然ガス価格動向2022年5月

パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。


ロシアのウクライナへの侵攻、急激に進む円安、世界的な半導体不足など先行きが全く見えない状況が続いていますね。


しかし、この様な時こそキッチリと市場を見つめ、早めに対策を講じていく事が生き残るために非常に重要であると思います。


さて今回は、最近の原油価格の動向をサラッと眺めてみたいと思います。


下図をご覧下さい。



これは北米地域のマーカー原油である「WTI原油」の先物価格、欧州地域のマーカー原油である「北海―ブレント原油」の先物価格に、米国と欧州における天然ガス価格の推移(月足)を合わせて示したものです。


報道等でご存知の方も多いかと思いますが、現在、原油価格は高騰し、その影響はガソリン価格など我々の生活に大きく影響して来ています。


プラスチックに関しても、供給メーカーによるプラスチック原料の価格改定などの動きが見られ、今後、コスト圧を回避するためのプラスチック原料調達への動きが活発化するものと思われます。


さて、先に示した原油価格と天然ガス価格の推移を見てみますと、欧州での天然ガスが高騰すると共に、WTI原油、北海-ブレント原油の価格も上昇している事が分かります。


他方、米国におけるには大きな変化は見られません。この違いは一体何に由来しているのでしょうか?


結論から申しますと、「欧州地域において、原油や石炭の化石資源から天然ガスへのシフトが起きている事」に起因していると言えます。


脱炭素社会の形成や環境に調和した資源とされている「水素ガス」の生成などを目的として、比較的クリーンで化学改質技術が確立している天然ガスへのシフトに欧州が舵を切りました。


このシフトに伴い欧州地域における天然ガスの価格が上昇し、これに引きずられる形で原油価格も上昇したと考えられます。


紙面の都合でここでは示していませんが、オーストラリア産や南アフリカ産の石炭の価格も上昇傾向にあります。


これまでの取引市場においては、需給バランスの変動や社会情勢などに基づく原油価格の変動に連動して天然ガスや石炭の価格が変動していました。


実際、フォーミュラ式の天然ガスの価格決定においては、原油価格(マーカー原油価格)がフォーミュラを形成する重要な要因(ファクター)の一つとなっていました。


そのため、原油価格の上昇と共に天然ガスの価格も上昇するという現象が見られた訳です。


ところが今回の原油高は、欧州地域における天然ガスへのシフトにより天然ガスの価格が上昇傾向に転じた後、調達コストの高騰を回避するため原油の調達も同時に進められた事に起因しています。


事実、先に示した天然ガス価格の推移を見るに、米国における天然ガス価格には大きな変化が見られず、この天然ガスシフトの動きが欧州発のトレンドである事が良く分かります


勿論、このトレンド変化の背景には、ポストコロナを見据えた産業再開に期待する市場の動きというものもあるのですが、「欧州地域における脱炭素社会の形成を見据えた天然ガスへのシフト」という現象を我々はしっかりと見据えておく必要があります。


現在、欧州におけるエネルギー資源の需要のうち、3割弱が天然ガスと言われており、この欧州における需要の多くはロシア産の天燃ガスに依存しています。


ロシアによるウクライナ侵攻で、欧州各国とロシアの関係が悪化すると共に、ロシアが天然ガスや原油の決済にルーブル払いを求めるなど、市場の混乱要因が次々を顕在化しています。


今後、欧州に対して米国やカタールの天然ガスが供給される見通しですが、ロシア産に比べ価格が高いので、どの程度需要を満たす事ができるのか不透明の状況です。


原油に関しても、ロシア産原油の禁輸を段階的に実施する事が決しましたが、調達における安価なロシア産原油の代替が進むのかは大きなポイントとなります。


実際、ロシアによるウクライナ侵攻後、インドやインドネシアがロシア産原油の調達を加速させていますし、中国もどさくさに紛れてイラン産原油の調達を拡大しています


原油市場、天然ガス市場共に不安定で、当面、価格も高止まりの状態が続くものと思われます。


先にも述べました様に、この価格高騰に伴いプラスチック原料の価格も上昇しているため、成形の現場などでは調達におけるコスト圧の軽減が大きな課題となってきます。


また2022年4月1日より施行された「プラスチック資源循環促進法(プラ循法)」においても、環境に調和した形でのプラスチック製品の設計が必須となりました。


これらの流れを受けて、コスト面で優れ、環境に調和した素材である再生プラスチック原料や資源プラスチック(資源プラ)に市場が注目する事が想定されます。


これからの時代は、資源価格のみならず「環境への調和性」というものも市場における取引価格へ大きく影響する事になりますね。


今回は最近の原油価格と天然ガス価格をサラッと眺めてみました。




 
 
bottom of page