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【労働安全衛生】熱中症と脳梗塞

パナ・ケミカルの技術顧問を務めさせて頂いています本堀です。夏本番、暑いですね。

 

近年、温暖化の進行やヒートアイランド現象により、都市部を中心に平均気温が上昇しています。

 

これに伴い、屋外や工場での作業中に熱中症が多発し、1990年代の中頃から熱中症による死者の数が増加しています。

 

また最近では、事務所においても、室内の換気不足や作業者の水分補給が不十分である事による熱中症が多発しています。

 

故に、作業者の健康を維持するため、事業所における熱中症対策を適切に行っていく必要があります。

 

この会員ページをご覧の皆様には、熱中症は対策を誤れば、作業者を死に至らしめる事もある非常に恐ろしい疾病である事を十分に理解して頂きたいです。

 

プラスチックのリサイクルの現場では、溶融やペレタイズ(押出成形)など加熱を伴う工程も存在し、作業環境の管理と改善を十分に施す事が求められます。

 

事例として、発泡スチロール(EPS)の減容処理工場でのスポットクーラーと工業用扇風機の写真を以下に示します。

 



 

スポットクーラーは、作業者に当たるようにフレキシブルな構造をしています。特に減容機周辺では、温度が著しく上昇するためスポットクーラーに加え、工業用の扇風機を設置しています。

 

この様な設備は施設計画時に温度分布を予測し、作業者により良い作業環境を提供する目的で計画する必要があります。そして定期的な作業環境測定を行う事で、熱中症のリスクが軽減している事を確認しなければなりません。

 

仮に熱中症が発生した場合の対応ですが、まず応急的な処置を事前に教育しておく必要があります。

 

何よりも水分・塩分の補給と体の冷却が必要です。特に冷却しても体温が低下しない場合、重度(重症度Ⅲ度、熱射病)の可能性もありますので、病院への搬送が必要になります。

 

このためには、予め作業者に対して熱中症に対する基礎的な知識を教育し、病院へのスムーズな搬送を含めた緊急時の対応を訓練しておかなければなりません。

 

対策を適切に講じれば、熱中症は必ず防ぐ事ができます。

 

これから本格的に暑くなる前に一度、皆様の事業所における作業環境をチェックされてみては如何でしょうか?

 

さて、今回お話しさせて頂くのは、熱中症と共に注意が必要な「夏血栓」と「脳梗塞」についてです。

 

以前、技術指導で訪ねた客先の中間処理施設で、作業者の一人が作業中にふらつき始め、まっすぐに歩く事が出来なくなる状態に陥った事がありました。

 

当初は熱中症が疑われたのですが、ろれつが回らなくなり、しびれや麻痺が生じた事から、病院へ緊急搬送しました。

 

検査の結果、軽度の脳梗塞である事が明らかとなり、そのまま入院加療する事になりました。

 

脳内の血管が起こすトラブルに由来する病気の事を「脳卒中」と言いますが、脳卒中には「脳内血管が詰まる」タイプと「脳内血管が破れる」タイプの病気が存在します。

 



 

「脳内血管が詰まる」タイプには「脳梗塞」が、「脳内血管が破れる」タイプには「脳出血」や「クモ膜下出血」がありまして、いずれも恐ろしい病気です。

 

気温が高くなる夏季には、発汗などで体内の水分が奪われると血液中の赤血球などが凝固して血栓が形成される事があります。

 

この様な血栓を「夏血栓」と言います。

 

夏血栓が形成されると脳血管内における血流が妨げられ、場合によっては脳血管を詰まらせる事で脳梗塞が発症します。

 

これが夏血栓による脳梗塞の発症の流れです。

 



 

実は、夏血栓による脳梗塞の症状は熱中症によく似ているため、両者を見分ける事が大切です。

 

先に申しました様に、脳梗塞が発症した場合は、麻痺が発生する事が多く、顔面や腕のしびれ、ろれつが回らなくなるなどの形で現れるため、この様なシグナルを把握した場合、病院へ救急搬送して医師の診察を仰いだ方が良いです。

 

少し古いデータなのですが、下図に国立循環器病センターによる季節毎の脳梗塞の発生件数を示します。

 

 




 

やはり夏季に脳梗塞の発生件数は増えています。

 

これは先に述べました「夏血栓」の影響でありまして、発汗や代謝による水分の喪失が大きな原因です。

 

そのため、夏血栓の発生を抑止するため、「十分な水分の摂取」というものが予防のために大切であると言えます。これは熱中症の予防と同じですね。

 

人間の体というものは、筋肉などを構成するタンパク質、エネルギーを貯蔵する脂肪、骨や歯などの無機物、そして水から成っています。

 

人体における水分の占める割合としては、成人男性で55~60%程度、成人女性で45~55%程度、幼児で55~70%程度と言われています。

 

新生児で水分が80%を占めるのですが、年齢が増すにつれ体内の水分量は減少していく傾向にあり、老人で50%程度に落ち着くそうです。

 

この体内の水分というものは、代謝に供されたりした後、尿や汗の形で排出され、不足分を飲むことで補っています。

 

参考に下表に人体における1日当たりの水の収支を示します。

 





 

通常、ヒトが1日活動するために必要とする水の量は2500ml程度、生命を維持するために最低限必要な量は1500ml程度と言われています。

 

したがって、少し余裕を見て1人1日当たり3000ml程度の水が飲用に必要という事になります。

 

塩分や栄養分の効率的な補給にはスポーツドリンクがすぐれていますが、無ければ水1リットルに対して塩を2~3g溶かしたものを作業場に常備して摂取しても宜しいです。

 

なお、塩分は熱中症の予防のために必須ですので、作業中にも水分と合わせて摂取して頂きたいです。

 

ちなみに東欧のチェコのガラス工場では、作業者の水分や栄養分の補給のため、ビールを飲みながら作業する事が認められているそうです。うらやましい職場ですね。

 

さすがに我が国ではこの様な事は出来ませんので、私がお客様の労働衛生に関する技術指導をさせて頂く際には、飲料と共に梅干し(クエン酸が多い)やブドウ糖(すぐにエネルギーになる)などを作業場に常備するようにお話させて頂いています。

 

酷暑はまだまだ続く様ですが、事業所全体で適切な熱中症対策を講じて頂き、乗り切って頂ければと思います。

 

 
 
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