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【技術解説】
発泡スチロールの減容工程に
組み込まれた異物除去機構

【解説】株式会社パナ・ケミカル技術顧問 本堀雷太
2021年4月7日

プラスチック廃棄物を原料に品質面で優れる処理物である「資源プラ」を製造するためには、再生処理の妨げとなったり、物性の劣化を招く可能性があったりする異物や汚れを適切に取り除く事が必須です。 

前回、パナ・ケミカルのお家芸である発泡スチロールのマテリアルリサイクルにおいて、破砕機に組み込まれた異物除去の機構(乾式比重選別)についてお話しさせて頂きました。 

今回はこの流れを受けまして、減容工程に組み込まれた異物除去機構について簡単にお話しさせて頂きます。 

発泡スチロールの減容処理は、粗破砕物に熱を掛けたり、溶剤を加えて膨潤・溶解させたりするなどしてセル中の空気を抜く(脱泡)事が行われています。 

卸売市場など大規模な排出先では、処理効率やランニングコストの関係から加熱減容処理が一般的に行われています。 

今回ご紹介しますのは、株式会社山本製作所が製造している「ハイメルター」シリーズでありまして、この装置は「電熱ヒーター方式による熱減容処理」を行うものです。 

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この処理装置は一般社団法人資源プラ協会が実施している「資源プラ製造装置認定」の記念すべき第一号認定装置であり、その高い能力が第三者から客観的に評価されています。 

処理能力に応じて「破砕―減容工程」が一体となった小型機(破砕・減容一体型)から、独立した破砕機と減容機をストックタンク経由で空気輸送システムにより連結した大型処理システムまで多様なラインナップが用意されています。 

したがって、ユーザーの要望に応じたレイアウトが可能で、自由度の高い処理場設計が提案できるという点は非常に大きなアドバンテージです。 

このハイメルターシリーズにおいては、EPSの減容物は板状のインゴットに成形されており、作業者にとって取扱い易く、検品や運搬、保管に適切な形状です。 

また表面が平坦であるために積み上げる事が可能で、パレット上に積み上げてストレッチフィルムで固定する事で市場取引に供される製品荷姿に仕上げられます。 

表面が平坦で積み上げが可能なインゴットが得られる理由は、熱減容後のインゴット成形時に圧延処理が施され、インゴット内部に残存する空気や熱分解に由来する排ガス等が除かれるからです。 

特に可燃性の排ガスが取り除かれる事は、インゴットを化学的に安定化させる効果があり、倉庫保管時における火災リスクの低減に大きく貢献している。製品インゴットの安全な市場取引を保証するものとして高く評価されるべきですね。 

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さて話を元に戻しますが、EPSの脱泡処理を行う際に施される加熱には、”技術的な負の側面”があるのです。 

ポリスチレンは、「スチレン」という単位(専門的には、「単量体(モノマー)」といいます)が直鎖状に連なった構造(「重合体(ポリマー)」といいます)を構成しているのですが、加熱によりこの直鎖構造が“ランダム”に切れてしまうのです。これを「熱分解」といいます。 

この熱分解により、分子鎖長が短くなったオリゴマー(オリゴスチレン)に加え、様々な低分子がガス成分などの形で発生します

仮に処理対象物と共に誤って乾電池などの異物を破砕口へ投入してしまったとしても、減容工程過程でこのスリット部分において除去する事ができ、製品インゴットへの混入を防止する事ができるのです。 

減容物がスリットを通過する工程は先述したインゴットの圧延成形の前段工程も兼ねており、減容物中に残存する空気や熱分解に由来する排ガス等を除く役割も担っています。 

このスリットの存在により減容工程から異物を取り除く事が可能となり、品質の高い資源プラを製造する足掛かりを得る事ができます。 

但し、このスリットでは極小の異物や他素材を分離除去する事が難しいです。 

故に作業者に対して、処理対象物の破砕機投入時において素材の分別と異物の除去の徹底を指導する必要があります。 

この様に「処理装置に組み込まれた異物の除去機構」というものは、異物の除去自体が目的なのでは無く、あくまでもヒトが見落とした異物を”念のため”回収するというもので、一種の”保険”であると言えます。 

何よりも処理の主役はヒトであり、処理装置をヒトが使いこなしながら処理の効率を高めていく事が大切です。 

そのためには処理装置の特性というものを十分に把握しておく事が何よりも重要で、装置メーカーとしては分かりやすいマニュアルの策定や現場での実地教育を適切に行う必要があります。 

その点で言いますと、ハイメルターシリーズのマニュアルは非常に良く出来ていまして、分かりやすくしかも作業者の安全を第一に配慮した作りになっています。 

私も仕事柄、様々な操作マニュアルや作業マニュアルを目にする事が多いのですが、山本製作所のハイメルターシリーズのマニュアルは素晴らしい完成度を誇っていると断言します。 

また装置の操作の実地指導も販売代理店であるパナ・ケミカルと連携して、適切に実施されており、ユーザーの目線に立ったサポート体制を構築している事は高く評価されるべきです。

今回はハイメルターシリーズに組み込まれた異物除去機構について紹介させて頂きました。

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