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【環境法務】
バーゼル条約の改正についてザックリと

【解説】株式会社パナ・ケミカル技術顧問 本堀雷太
2020年7月1日

皆様既に御存知だと思いますが、「バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)」の改正に伴う国内での作業か環境書と経済産業省によって進められています。

中国の輸入規制「国門利剣(ナショナルソード)」に端を発した廃プラスチックの国際物流への社会の関心の高まりを受けて、2019年4月29日~5月10日に第14回バーゼル条約締結国会議がスイスのジュネーブで開催されました。

この会議では、越境移動に伴う環境汚染を引き起こす可能性がある廃プラスチックの取扱いについて協議され、リサイクルに適さない廃プラスチックの輸出の規制が行われる事に決しました。

今回の改正のポイントは、全ての廃プラスチックがバーゼル条約において網羅的に規定される事になった事にあります。

具体的には下表に示した様に、「特別の考慮が必要な廃プラスチック」、「有害な廃プラスチック」、「非有害な廃プラスチック」の3種類に分類され、「特別の考慮が必要な廃プラスチック」と「有害な廃プラスチック」についてはバーゼル条約上の規制を受ける事となりました。

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ただし、一つ注意して頂きたいのですが、この規制は決して「輸出禁止措置」ではないのです。規制対象の廃プラスチックであっても輸出相手国の同意があれば輸出は可能です。

しかし、昨今のプラスチックの環境汚染に対する社会の厳しい眼を逃れて汚染を引き起こす可能性のある廃プラスチックを越境させる事は非常に難しくなると考えた方が宜しいかと思います。

さて、このバーゼル条約ですが、我が国の国内における実務的な取扱いは「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)」に基づいて執り行われています。


今回の改正において最大のポイントとなるのは、先に述べた「特別の考慮が必要な廃プラスチック」というものの範囲をどうするかという点です。

「特別な考慮」って何の事なのか良く分かりませんよね。

そこでバーゼル条約の改正内容を見てみますと、附属書ⅡのY48に以下の様に定義されています。

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要は廃プラスチックのうち、保有する物理的・化学的・生物学的な性質などに由来する有害性を有する「有害な廃プラスチック」とリサイクルに適した「非有害な廃プラスチック」以外は基本的に「特別の考慮が必要な廃プラスチック」であると記されているのです。

何だか無責任な記述ですね。

ただ実務上は、どの様な廃プラスチックが「特別な考慮が必要な廃プラスチック」に該当するかは各国の解釈に委ねられているという事になる訳です。

現在、環境省の専門家会議や経済産業省において廃プラスチックの異物の含有量や汚れの程度を吟味して「特別な考慮が必要な廃プラスチック」の該当範囲の検討が進められています。

改正バーゼル条約(改正附属書)が発効するのが2021年1月1日ですので、それまでに環境省や経済産業省から「特別な考慮が必要な廃プラスチック」の該当範囲が公表される事になるかと思います。

その折はまたこの会員ページで取り上げたいと思います。

さて、先にも述べましたが、今回のバーゼル条約の改正は越境に伴い環境を汚染する可能性のある廃プラスチックの輸出を完全に禁止するものではありません。

あくまでもその様な廃プラスチックを輸出する場合には輸出相手国の同意を得て輸出するという手続き上のルールを明確に定めるというものです。

しかし実務上は、相手国がそう易々とリサイクルを行う上で不利な汚れた廃プラスチックの輸入を認める事はなかなか無いと言えます。

やはり、中長期的にはリサイクルに適さない汚れた廃プラスチックについては“行き先”を失っていく宿命にあるのではないでしょうか?

以前、環境省の方とお話しをさせて頂いた折に、「廃プラは全量国内でリサイクルが出来るはずだ!」と呟かれたのを聞いた事があります。

これにはさすがに耳を疑いました。「この役人アタマ大丈夫か?」と思いました。

我が国のマテリアルバランスを鑑みれば、全量国内リサイクルはどう考えても無理な話です(特にPETボトル)。

やはり国際的な物流を利用し、我が国の持つ優れた技術を活用する事で、多様なリサイクルのチャネルを積極的に構築する方が妥当だと思います。

今回は紙面の関係で詳しく取り上げませんが、現在、アジア地域で考えられる物流チャネルとその問題点をまとめたものを下図に示します。

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現在の我が国においては、再生原料に対する需要自体が小さく、再生プラスチック製品(成形品)の市場自体が十分に成長していません。

これは法整備や社会の認知など様々な原因があるのですが、人口減や極端な高齢化の進行に伴い消費市場が縮んでいく我が国においてはやむを得ないと言えます。

やはり、リサイクルに適した廃プラスチック、改正バーゼル条約においては「非有害な廃プラスチック」を資源や工業原料として位置づけて輸出する道を模索していく事が重要です。

日本国内で閉じた循環の輪を作るのも大切ですが、海外との間で安定かつ多様なリサイクルのチャネルを構築する事も一考に値するかと思います。

この戦略はこの会員ページで度々紹介させて頂いています「資源プラ(資源プラスチック)」という取り組みと見事に合致しています。

資源プラという取り組みにおいては、マテリアルリサイクルに適した品質の廃プラスチック処理物を、(1)ヒトによる分別の徹底と丁寧な異物除去、(2)優れた処理装置の利用
による高品質で安定な処理物の製造というプロセスによって“製造”しています。

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本質的には、資源プラは廃プラスチックという原料(資源)を「ヒト」と「装置(技術)」を巧みに組み合わせて加工(前処理、中間処理)する事で製造される工業原料であると言えます。

この品質に依拠するマテリアルリサイクルの考え方は、今回のバーゼル条約の改正に対しても有効に働く事はご理解頂けたと思います。

今後、間違いなくプラスチックリサイクルの形は大きく変わります。

この劇的な変化に対応するための情報をこの会員ページでは取り上げて参りたいと思います。
 

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