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【資源プラ】
最大の課題は排出者のマナー向上です

【解説】株式会社パナ・ケミカル技術顧問 本堀雷太
2020年1月19日

この会員ページで何度もお話しさせていますが、「資源プラスチック(資源プラ)」という取り組みは、再生プラスチック原料製造の基材となるプラスチック廃棄物の処理物(前処理、中間処理)の「品質」を向上させる事で、再生プラスチック原料の品質向上や物性の安定化を直接目指すというものです。

そのため、如何にして出発原料であるプラスチック廃棄物から異物や汚れを効率良く取り除いていくのかという点が事業としての成否を左右します。

しかし、プラスチック廃棄物、特に“消費者による使用”を経る事でプラスチック製品としての役割を終えてから回収され、品質的に優れるものはマテリアルリサイクルに回される「ポストコンシューマー品」に関しては、その履歴から見てもわかる様に異物や汚れの混入の程度が多くなってしまいます。

多くの場合、これらの異物や汚れは中間処理を施す際に手作業で除去されています。いわゆる「前処理」というヤツです。

例えば、パナ・ケミカルのお家芸である発泡スチロール(EPS)製魚箱のリサイクルの現場では、フイルムやテープでグルグル巻きにされたEPS製魚箱から手作業で異物を除去されています。

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この様な地道な作業が高品質な資源プラを製造する原動力となっているのですが、如何せん“ヒトの力(マンパワー)”というものには限界があります。

やはり、排出者の皆様には排出に先駆けて可能な限り分別を徹底して頂き、汚れを取り除いてから排出して頂きたいのです。

EPS製魚箱について見てみますと、排出時には様々な異物が混ざったり、汚れが付着したりした状態で排出されているケースが見られます。

例えば、EPS製魚箱の基材であるポリスチレン(PS)とは異なる素材のポリエチレン(PE)製の粘着テープが貼り付けられていたり、ポリスチレンのマテリアルリサイクルを進める上でかなりの障害となる輪ゴムが分別されずに処理工場へ持ち込まれたりする事が良くあります。

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特に輪ゴムは分別されずに中間処理が施されると以降の工程での分別が大変困難となり、再生プラスチック原料にこのまま混入してしまいます。

すると、再生プラスチック原料の成形時の物性低下や成形品の破損などのトラブルを引き起こす事があるため、非常に厄介な異物であります。

それから、そもそもEPSとは異なる素材の魚箱が持ち込まれる事もあります。

下写真をご覧下さい。

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中間処理前のEPS製の魚箱が散乱していますが、黄色の丸で囲った魚箱だけはEPS製では無く、発泡ポリプロピレン(EPP)製でありまして、これが誤って混入してしまうとリサイクル自体が出来なくなってしまいます。

まさに「廃棄物に散々手を加えて再び廃棄物を製造する」というとても悲しい事になってしまいます。

しかし、素人の方がEPSとEPPを見分ける事は至難の業でありまして、排出者を責める事は出来ないと思います。

この場合は、前処理、中間処理の作業に従事する作業者の教育を徹底して、現場で適切な分別を担保する仕組みを構築する必要があるかと思います。

しかし、現場の作業者に過度の負担をかける事は作業効率を著しく低下させる可能性がありますので、やはり排出者に排出マナーの向上に協力して頂く事は重要な課題となります。

そのためには、どの様な形の排出が問題となるのかを排出者に知って頂く必要がありますので、現場では写真等で記録しておくと宜しいかと思います。

EPS製魚箱のリサイクルの現場で見られる悪質な排出マナーの例を少しだけ示します。

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非常に多く見られるものとしては、魚アラや魚の血が付着したまま排出されるEPS製魚箱が挙げられます。

魚アラや魚の血は乾燥するとEPS表面に固着してしまい、洗浄・除去する事が非常に困難となります。

また腐敗性ですので、悪臭の発生や雑菌の繁殖を招き、衛生的な処理の妨げとなります。

魚箱の排出時には魚アラや魚の血などは洗い流した上で処理場へ持ち込んで頂きたいですね。

あと、卸売市場などで多く見るものに、「活魚用ポンプを取り外さずに排出される」というものがあります。

一般にはほとんど出回らないのですが、活魚の流通にはポンプを魚箱内部に組み込むことができる魚箱が卸売市場などでは多く出回っておりまして、廃棄時にポンプを外さずに排出される事が良くあります。

作業者が見落とす事でこのポンプが分別されずに中間処理が施されると、後工程の作業が著しく滞り、再生プラスチック原料の品質どころの話ではなくなってしまいます。

やはり排出者の皆様が処理場に持ち込む際に予め取り外して頂きたいですね。

もっとヒドイものもあります。

下写真に示した魚箱は魚箱の内部にペンキが塗布されたものです。

恐らく何かを着色する際に覆いとしてESP製魚箱を用いたのでしょうが、こんなものをリサイクルの現場に持ち込むこと自体非常識ですね。

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「こんなものは到底リサイクル出来ん!一体何考えとるんだ!ふざけるな!」と申したい訳です。

資源プラは廃棄されたプラスチックに適切な処理を施す事で高品質化された再生プラスチック原料の基材(ベースマテリアル)です。

適切な処理を行う前提条件として十分に異物や汚れを除く必要がある訳で、この作業は現場の作業者の手作業に多く依存しています。

しかるにヒトの力には限界がありますし、異物や汚れは実に多様です。

是非、廃棄プラスチックを持ち込む排出者の皆様にも異物や汚れの除去を行って頂き、円滑な資源プラ製造に協力して頂きたいですね。

そのためには、我々としても「マテリアルリサイクルの意義」と「資源プラというチャレンジ」について排出者の皆様にもご理解頂く努力を続けていく必要がありますね。
 

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